認知症や障がいなどによって判断能力が低下すると、日常生活の中で「契約」「財産管理」「各種手続き」を本人だけで行うことが難しくなる場合があります。
成年後見制度は、こうしたひとりで決めることに不安がある方を法的に支える制度です。
厚生労働省の成年後見制度ポータルでも、認知症、知的障害、精神障害などによって、預貯金などの財産管理や介護・福祉サービスの契約、施設入所・入院の契約などをひとりで行うことが難しい場合があると説明されています。
では、具体的にどのような状態になったときに成年後見制度を検討すればよいのでしょうか。
ここでは、代表的な5つのサインをご紹介します。
1.預貯金の管理や銀行手続きが難しくなってきた
成年後見を検討する代表的なきっかけの一つが、お金の管理が難しくなってきた場合です。
たとえば、
・通帳やキャッシュカードを何度もなくす
・暗証番号を忘れて銀行手続きができない
・毎月の支払いを忘れるようになった
・自分の預貯金がいくらあるのか分からなくなってきた
・家族が代わりに銀行手続きをしようとしても手続きできない
といったケースです。
成年後見人等は、本人の不動産や預貯金などの財産を管理し、必要な支払いや手続きを行う役割を担います。厚生労働省も、成年後見人等の代表的な役割として預貯金等の財産管理を挙げています。
特に、本人名義の預貯金について家族だからという理由だけで自由に手続きできるわけではありません。
「まだ何とかできているから」と先送りしているうちに、急な入院や施設入所が重なり、手続きが進められなくなることもあります。
2.施設入所や介護・福祉サービスの契約を本人だけで決めるのが難しい
高齢になったり認知症が進行したりすると、
「どの施設に入るのか」
「どの介護サービスを使うのか」
「契約内容が本人にとって適切なのか」
といった判断が難しくなることがあります。
成年後見人等は、本人の希望や生活状況を踏まえながら、必要な福祉サービスや施設入所などの契約を法的に支えることができます。
ただし、成年後見人が本人の人生を一方的に決める制度ではありません。
現在の成年後見制度では、本人の意思を尊重しながら支援することが重要とされています。
「本人が何を望んでいるのか」を確認しながら、本人ができることは本人に任せ、難しい部分を補っていくという考え方が基本です。
3.不要な買い物や契約が増えてきた
こんな変化にも注意が必要です。
・同じ商品を何度も購入している
・必要のない高額商品を契約している
・訪問販売や電話勧誘で契約してしまう
・契約したこと自体を覚えていない
・悪質商法の被害が心配になってきた
厚生労働省の成年後見制度の案内でも、本人が不利益な契約だと理解できないまま契約してしまい、悪質商法の被害に遭う可能性が示されています。
法定後見では、本人の判断能力の程度に応じて後見・保佐・補助という3つの類型があります。
一定の場合には、本人が行った法律行為を取り消したり、重要な契約について後見人等が関与したりすることができます。たとえば保佐では、借金や保証、不動産など重要な財産の売買について、一定の取消権が認められています。
単なる「物忘れ」だけではなく、契約による実際の不利益が出始めているかも重要なポイントです。
4.認知症や障がいなどにより、ひとりで判断することに不安がある
成年後見制度は、高齢者だけの制度ではありません。
対象となり得るのは、認知症だけでなく、
・知的障害
・精神障害
・その他、精神上の障害により判断能力が不十分な方
などです。
厚生労働省も、認知症、知的障害、精神障害などによって、契約や財産管理などをひとりで行うことが難しい方を成年後見制度の支援対象として説明しています。
大切なのは、病名そのものではなく、実際にどの程度、物事を理解し判断できるのかという点です。
そのため、
「認知症と診断されたから必ず成年後見」
というものでもありません。
反対に、診断名がなくても、日常の契約や財産管理に大きな支障が生じている場合には、専門家や地域の相談窓口に相談してみる価値があります。
5.今は元気だが、将来の判断能力低下に備えておきたい
ここまでご紹介した4つは、主に「すでに困りごとが生じている場合」の話です。
一方、
「今は元気だけれど、将来認知症になったらどうしよう」
「子どもに迷惑をかけたくない」
「自分が信頼している人に財産管理を任せたい」
という方には、任意後見制度という選択肢があります。
任意後見は、本人に十分な判断能力があるうちに、将来自分の判断能力が低下した場合に備え、あらかじめ「誰に」「どのような支援をお願いするか」を契約で決めておく制度です。
任意後見契約は公正証書で締結し、その後、本人の判断能力が低下したときに家庭裁判所が任意後見監督人を選任すると、任意後見人による支援が始まります。
つまり、
すでに判断能力が低下している場合
→ 法定後見
判断能力があるうちに将来へ備えたい場合
→ 任意後見
という大きな違いがあります。
成年後見を検討するのは「何もできなくなってから」ではありません
成年後見制度というと、
「認知症がかなり進んでから利用する制度」
というイメージを持たれる方も少なくありません。
しかし実際には、
・銀行手続きが難しくなった
・契約内容を理解することが難しくなった
・悪質商法が心配になった
・施設入所の手続きが必要になった
といった生活上の具体的な困りごとが、制度を検討するきっかけになります。
一方で、成年後見制度は一度利用を開始すると、本人の判断能力が回復するなどの事情がない限り、単に「必要がなくなった」という理由だけで自由に終了できる制度ではありません。
また、申立時に家族が希望した人が必ず後見人等に選ばれるわけではなく、家庭裁判所が本人の状況を踏まえて選任します。場合によっては弁護士、司法書士、社会福祉士などの専門職が選任されることもあります。
そのため、「成年後見を使うかどうか」だけでなく、ほかの方法も含めて事前に検討することが大切です。
成年後見以外の方法が適していることもあります
本人にまだ十分な判断能力がある場合には、
・任意後見契約
・見守り契約
・財産管理等委任契約
などを組み合わせて将来に備える方法も考えられます。
特に任意後見では、自分が元気なうちに任せる人や支援内容を決めておくことができるため、「自分らしい将来の備え」を考えたい方に適した制度の一つです。
大切なのは、制度ありきで考えるのではなく、
本人が現在何に困っているのか
本人は将来どのように暮らしたいのか
家族だけで支えることに限界がないか
を整理したうえで、必要な支援を選ぶことです。
まとめ|「少し心配」が相談のタイミングです
成年後見制度を検討する代表的なサインは、
- 預貯金や銀行手続きが難しくなってきた
- 施設入所や介護・福祉サービスの契約が難しい
- 不要な契約や悪質商法が心配
- 認知症や障がいなどにより、ひとりで判断することに不安がある
- 元気なうちに将来の判断能力低下へ備えたい
といった場面です。
ただし、成年後見制度が必要かどうかは、本人の判断能力や生活状況、財産状況、家族関係などによって異なります。
「まだ成年後見を使うほどではない気がする」
という段階でも構いません。
むしろ早い段階で状況を整理しておくことで、法定後見だけでなく、任意後見や見守り契約、財産管理等委任契約など、選べる支援の幅が広がります。
伊達行政書士事務所では、成年後見制度や将来の財産管理について、
「何から考えればよいか分からない」
「親の場合は成年後見が必要なのか知りたい」
「任意後見も含めて比較したい」
といった段階からご相談いただけます。
ご本人・ご家族の状況を整理しながら、必要な支援の形を一緒に考えていきます。

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