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成年後見の前段階でできる備え|見守り契約と財産管理等委任契約とは?

「まだ自分で判断できるけれど、将来が少し心配」

「一人暮らしの親のことが気になっている」

「最近、銀行や役所の手続きが負担になってきた」

このような場合、すぐに成年後見制度を利用するとは限りません。

本人にまだ十分な判断能力がある段階では、見守り契約や財産管理等委任契約を利用して、必要な部分から支援を始める方法があります。

また、将来の判断能力低下に備える「任意後見契約」と組み合わせることで、

今の生活を支えながら、将来まで切れ目なく備える

という考え方もできます。

この記事では、見守り契約と財産管理等委任契約について、それぞれの役割や任意後見との違いを分かりやすく解説します。

目次

成年後見制度は「今すぐ必要」とは限りません

成年後見制度は、認知症や知的障害、精神障害などにより、契約や財産管理などを一人で判断することに不安がある方を法的に支援する制度です。厚生労働省も、預貯金等の財産管理や介護・福祉サービス、施設入所・入院などの契約を一人で行うことが難しい場合に利用される制度として説明しています。

一方で、

「判断能力は十分にある」
「自分で契約内容も理解できる」
「ただ、一部の手続きだけ誰かにお願いしたい」

という段階では、成年後見制度以外の方法が適していることがあります。

その代表的なものが、

見守り契約
財産管理等委任契約

です。

見守り契約とは?

見守り契約は、本人と支援する人が定期的に連絡を取ったり面談したりして、本人の生活状況や健康状態などを確認していくための契約です。

特に、

「一人暮らしなので、何かあったときが心配」
「遠方に住む家族だけでは日常の様子を把握できない」
「将来、任意後見を利用するタイミングを見逃したくない」

といった場合に考えられます。

見守り契約でできること

契約内容によって異なりますが、たとえば、

・定期的に電話や面談を行う
・本人の生活状況を確認する
・体調や生活環境の変化を把握する
・困りごとがないか確認する
・必要に応じて医療・介護・福祉などの支援先につなぐ
・任意後見を開始すべき状態になっていないか確認する

といった内容が考えられます。

見守り契約のポイントは、**何かを本人に代わって行うことよりも、「変化に早く気づくこと」**にあります。

特に任意後見契約を結んでいる場合、本人の判断能力が低下した段階で家庭裁判所に任意後見監督人選任の申立てを行い、任意後見を開始する必要があります。任意後見契約は、家庭裁判所が任意後見監督人を選任して初めて効力が生じます。

そのため、定期的に本人の状況を把握しておく見守り契約は、任意後見と相性のよい仕組みといえます。

財産管理等委任契約とは?

財産管理等委任契約は、本人に判断能力があるうちに、自分の財産管理や各種手続きの一部を、信頼できる人へ委任する契約です。

「判断できないから代わってもらう」のではなく、

判断はできるけれど、実際の手続きが大変なのでお願いする

という点が大きな特徴です。

日本公証人連合会も、任意後見契約と併せて通常の「財産管理等委任契約」を締結する場合があることを案内しています。

財産管理等委任契約では何をお願いできる?

委任する内容は、本人と受任者との契約によって決めます。

たとえば、

・預貯金の入出金
・生活費や公共料金等の支払い
・年金に関する手続き
・保険に関する手続き
・税金等の支払い
・役所での各種手続き
・介護サービス等に関する契約手続き
・その他、契約で定めた財産管理や事務

などが考えられます。

ただし、何でも自由にできる契約ではありません。

受任者が行えるのは、あくまで契約によって与えられた権限の範囲です。

そのため財産管理等委任契約では、

「何をお願いするのか」
「どこまで代理権を与えるのか」
「通帳や印鑑をどのように管理するのか」
「支出についてどのように報告するのか」

といった内容を具体的に決めておくことが重要です。

成年後見との大きな違いは「本人の判断能力」

見守り契約や財産管理等委任契約と成年後見制度の大きな違いは、本人の判断能力があることを前提にしているかどうかです。

見守り契約や財産管理等委任契約は、本人が契約内容を理解し、自分の意思で契約できることが前提になります。

一方、成年後見制度は、認知症などによって判断能力が不十分になり、一人で契約や財産管理を行うことが難しくなった場合に利用されます。

つまり、イメージとしては、

判断能力が十分にある

見守り契約・財産管理等委任契約

将来の判断能力低下にも備える

任意後見契約

すでに判断能力が低下している

法定後見制度

という整理が分かりやすいでしょう。

財産管理等委任契約と任意後見はどう違う?

この2つは混同されやすいのですが、利用する時期が異なります。

財産管理等委任契約

本人に判断能力がある段階から利用できます。

たとえば、

「足腰が弱くなり銀行へ行くのが大変」

という場合でも、本人が契約内容を理解できる状態であれば利用を検討できます。

任意後見契約

任意後見は、本人に判断能力があるうちに将来へ備えて契約しておき、その後、判断能力が不十分になった段階で利用を開始する制度です。

任意後見契約は公正証書で締結し、本人の判断能力が低下した後、家庭裁判所が任意後見監督人を選任することで効力が生じます。

したがって、

今の生活を支える
→ 財産管理等委任契約

将来の判断能力低下に備える
→ 任意後見契約

という関係になります。

「移行型」の任意後見という考え方

実務では、

見守り契約

財産管理等委任契約

任意後見契約

を組み合わせることがあります。

たとえば、

元気なうち

見守り契約で定期的に状況確認。

必要になれば財産管理等委任契約に基づき、銀行や役所などの手続きを支援。

判断能力が低下してきたら

家庭裁判所へ任意後見監督人選任を申し立て、任意後見へ移行。

という流れです。

日本公証人連合会でも、任意後見契約と併せて財産管理等委任契約を締結する場合があることが示されています。

このように、本人の状態に応じて支援内容を切り替えていくことで、元気なときから判断能力が低下した後まで支援をつなげていくことができます。

財産管理等委任契約だけでは十分でない場合もあります

財産管理等委任契約は便利な仕組みですが、成年後見制度と同じ法的効果があるわけではありません。

特に注意したいのが、取消権がないことです。

任意後見についても、任意後見人は契約で定めた代理権の範囲で本人を代理できますが、本人自身が行った契約を当然に取り消す権限はありません。法務省もこの点を説明しています。

そのため、認知症が進行し、

・不必要な契約を繰り返す
・悪質商法の被害に遭う
・本人自身による財産処分を止める必要がある

といった状況になった場合には、任意後見や法定後見など別の制度を含めて検討する必要があります。

見守り契約だけで財産管理はできる?

基本的には、見守り契約と財産管理等委任契約は役割を分けて考えた方が分かりやすいです。

見守り契約
→ 本人の生活状況や判断能力の変化を確認する

財産管理等委任契約
→ 本人から委任された範囲で財産管理や手続きを行う

という違いです。

たとえば、

「月に1回連絡をして様子を確認する」

という内容だけでは、通常、本人の銀行口座からお金を引き出したり、本人に代わって契約をしたりする権限まではありません。

実際に財産管理を任せたい場合には、その権限を明確にした委任契約を作成しておくことが重要です。

こんな方は一度検討してみてもよいでしょう

見守り契約や財産管理等委任契約は、特に次のような方に適しています。

・一人暮らしで将来が少し不安
・子どもが遠方に住んでいる
・銀行や役所の手続きが負担になってきた
・通帳や支払いの管理を手伝ってほしい
・今は元気だが認知症になったときが心配
・任意後見を検討している
・将来、家族にできるだけ負担をかけたくない

まだ大きな問題が起きていない段階だからこそ、本人自身が希望する支援方法を選ぶことができます。

契約する際に大切なのは「誰に、何を任せるか」

財産管理等委任契約では、大切な財産や手続きを他人へ任せることになります。

そのため、

誰に任せるのか

は非常に重要です。

また、単に「財産管理をお願いします」とするのではなく、

・預貯金の管理範囲
・毎月の支払方法
・大きな支出をするときのルール
・通帳や印鑑の保管方法
・本人や家族への報告方法
・契約を終了する場合の取扱い

などを具体的に決めておくことで、後々のトラブルを防ぎやすくなります。

本人の財産を扱う契約だからこそ、「できること」だけでなく「しないこと」も明確にしておくことが大切です。

まとめ|成年後見になる前だからこそ選べる方法があります

成年後見制度が必要になる前の段階でも、将来へ向けてできる準備があります。

整理すると、

見守り契約
→ 定期的に連絡・面談を行い、生活の変化を確認する

財産管理等委任契約
→ 判断能力があるうちから、必要な財産管理や手続きを任せる

任意後見契約
→ 将来、判断能力が低下したときの支援者や支援内容をあらかじめ決めておく

という違いがあります。

どの制度が適しているかは、

「現在どこまで自分でできるのか」
「何を誰に任せたいのか」
「将来どのように暮らしたいのか」

によって変わります。

成年後見制度を利用する段階になってから考えるのではなく、まだ自分で判断できるうちに将来の支援について考えておくことには大きな意味があります。

伊達行政書士事務所では、

「一人暮らしの親が心配」
「お金の管理を少し手伝ってほしい」
「任意後見まで必要なのか分からない」
「見守り契約と財産管理等委任契約を組み合わせたい」

といった段階からご相談いただけます。

ご本人・ご家族の状況や希望を整理しながら、今必要な支援と、これから必要になる支援を一緒に考えていきます。

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